「尿酸値が高いっていわれたけど、どんなことに気を付けたら良いんだろう?」
「痛風を予防するためには、どんな食事を心掛ければ良いのかな?」
健康診断で尿酸値が高いと指摘され、「痛風」という病気について気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
痛風は尿酸値が基準値を超える「高尿酸血症」によって引き起こされる病気で、足や手の関節に激痛を生じることがあります。
高尿酸血症と痛風はさまざまな要因により発症しますが、なかでも食生活との関連が深い病気といわれています。
そのため、痛風の予防・改善には食生活を見直すことが重要です。
そこでこの記事では、痛風を予防・改善するための食生活のポイントや痛風の発症に大きく関わる「プリン体」の摂取量を抑えるためのコツを解説します。
食生活を見直し、健康的な毎日を目指しましょう。
1.痛風とは
「痛風って具体的にどんな病気なの?」
このように疑問に感じている方もいらっしゃることでしょう。
痛風とは血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える「高尿酸血症」の状態が続くことで生じる関節炎のことです[1]。
尿酸はあらゆる生物の体内に存在する「プリン体」が体内で分解された際に発生する老廃物(燃えかす)で、血液中で増加することにより関節内に漏れ出し、結晶をつくります。
すると体内では結晶を壊そうとする反応が生じ、関節に炎症や痛みを引き起こすのです。
痛風を引き起こす高尿酸血症の原因には食生活が大きく関わっています。
プリン体はさまざまな食品に含まれているため、過食はプリン体の摂り過ぎにつながります。
またアルコールの過剰摂取は体内でプリン体の合成を進める他、尿酸の排出を抑えるため、痛風の発症リスクを高めてしまうのです。
そのため、痛風の予防や改善には食生活を見直すことが重要といえるでしょう。
この他、痛風の特徴や食事以外の原因、痛みへの対処法については以下の記事で解説しているので、参考にしてくださいね。
[1] 厚生労働省 健康づくりサポートネット「アルコールと高尿酸血症・痛風」
【関連情報】 「痛風とは?尿酸値の目安や痛みの原因、予防と対策の方法まで徹底解説」についての記事はこちら
「「体調管理に努める」って何をする?毎日の体調管理のポイント」についての記事はこちら
2.痛風を予防・改善するための食事のポイント
「じゃあ、痛風を予防するためにはどんな食事を摂れば良いの?」
というのが最も気になるところですよね。
また、既に痛風を発症していて症状を悪化させないための食事のポイントを知りたいという方もいらっしゃることでしょう。
そこでここでは痛風を予防・改善するための食事のポイントを六つご紹介します。
ポイント1 プリン体を多く含む食品を控える
痛風の予防や改善にはプリン体を多く含む食品を控えることが重要です。
プリン体は体内でも合成されますが、肉類や魚類などの食品にも含まれます。
一般的に、食品100g当たりのプリン体の含有量が200~300mgのものを多く含む、300mg以上のものを極めて多く含む食品といいます[5]。
なお、プリン体の1日の摂取推奨量は、1日当たり400mgとされています[5]。
プリン体含有量 | 食品名 |
---|---|
極めて多い(300mg以上) | あん肝の酒蒸し、いさき白子、かつお節、鶏レバー、煮干し、干ししいたけ、まいわし干物 |
多い(200〜300mg) | かつお、さんま干物、大正えび、牛レバー、豚レバー、まあじ干物、まいわし |
一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版ダイジェスト・ポケット版」をもとに執筆者作成
プリン体を多く摂取することで体内の尿酸が増え、高尿酸血症や痛風を引き起こす原因になるため、尿酸値が高めの場合には注意が必要です。
高尿酸血症と診断されている場合には1日に摂取するプリン体の量を400mgまでにするよう勧められています[2]。
また高尿酸血症や痛風を予防したいという場合にも、プリン体の摂取量が多過ぎないか確認してみましょう。
[2] 日本痛風・核酸代謝学会「 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版」
ポイント2 アルコールの摂取を控える
痛風の予防や改善にはアルコールの摂取を控えることが重要です。
痛風を引き起こす要因には、プリン体を多く含むビールなどの酒類やおつまみを一緒に摂取することが挙げられます。
またビールに限らず、アルコール自体に体内のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の分解を進めてしまうことも問題です。
ATPは分解される際にプリン体を増加させ、尿酸値を高めてしまいます。
それだけでなく、多量の飲酒によって腎臓の機能を低下させることは尿酸の排出を困難にし、体内に蓄積させる原因にもなります。
飲酒すること自体が高尿酸血症や痛風を招く原因になるのですね。
またアルコールによる健康への影響は、飲酒量ではなく純アルコール量(酒に含まれるアルコール量)が基準になります。
これはアルコールによる健康への影響が飲酒量ではなく純アルコールの量によるとされているためです。
そのため、飲酒時には純アルコール量を意識するようにしましょう。
代表的なアルコールの純アルコール20gに当たる量は以下のとおりです。
こちらの図を参考に、禁酒日を設けながらアルコールの摂取を控えましょう。
ポイント3 糖質や脂質の過剰摂取を控える
さらに、糖質や脂質の過剰摂取を控えることも重要です。
糖質や脂質を過剰に摂取して肥満になると、体内で尿酸がつくられやすくなったり排出が抑えられたりするといわれています。
特に果物や砂糖に含まれる「果糖」は尿酸値を高めるため注意が必要です。
プリン体と共に、糖質や脂質も摂り過ぎないよう注意しましょう。
糖質の種類や健康的な食べ方や、脂質の少ない食べ物や吸収を抑えるための食べ方のコツは以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてくださいね。
糖質、糖類、糖分の違いは?太る理由や健康的な食べ方などを解説!
脂質の少ない食べ物とは?脂質の摂取や吸収を抑えるための工夫!
ポイント4 水分を十分に摂取する
痛風の予防や改善には、水分を十分に摂取することが重要です。
これは水分の摂取によって尿酸の排出を促すことができるためです。
十分な水分を摂ることで尿量が増えると、それに伴い尿酸の排出量を増やすことができます。
その反面、運動などをして汗をたくさんかいた後に十分な水分を摂らずにいると、尿酸値が高くなってしまうこともあるため注意しましょう。
高尿酸血症や痛風の予防・改善には、1日当たり2Lを目標に、水やお茶などを摂取することが勧められています[5]。
アルコールや牛乳、糖分を含むジュースなどを摂取することは控えましょう。
ポイント5 摂取カロリーを適切に制限する
痛風の予防や改善には、摂取カロリーを適切に制限することが重要です。
痛風は過食やプリン体の過剰摂取などの食習慣が関与するため、体内の脂質の値が基準値を超える「脂質異常症」や血糖値が慢性的に高い「糖尿病」、肥満を合併することが多いといわれています。
肥満である場合には、体内でプリン体の合成を進めてしまうといわれています。
さらに、肥満では血糖値を下げるはたらきのある「インスリン」というホルモンが十分に作用せず、尿酸の排出を抑えてしまうことも分かっています。
いずれも高尿酸血症や痛風の原因になることが分かりますね。
そのため、肥満がある場合には肥満を解消し、肥満がない場合にもさまざまな合併症や痛風を予防するために、摂取カロリーを適切に制限することが重要です。
適切なエネルギー摂取量は性別や年齢、標準体重の他、日常生活でどのくらい体を動かすかを表す「身体活動量」によって異なります。
以下の表でご自身の身体活動量を確認してみましょう。
低い | 生活の大部分を座って過ごし、体を動かす機会があまりない場合 |
---|---|
普通 | 座って過ごすことが多いが、歩いたり立った状態で作業・接客したりすることがある仕事に就いている場合、または通勤や買い物で歩いたり、家事をしたり、軽いスポーツを行ったりする習慣がある場合 |
高い | 移動したり立った状態で作業したりすることの多い仕事に就いている場合、または余暇にスポーツをするなどの活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
続いてBMIを参考に目標とする体重を設定しましょう。
厚生労働省は18歳以上に対し、目標とすべきBMIの範囲を定めています。
年齢 | 目標とするBMI |
---|---|
18〜49歳 | |
50〜64歳 | |
65歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
これは総死亡率をできるだけ低く抑える観点から設定されたものです。
目標とするBMIのときの体重は、[身長(m)の2乗]×[目標のBMI]で求められます[8]。
さらに、以下の表で該当する体重1kg当たりの推定エネルギー必要量を目標体重に掛けたものが1日に摂取すべきカロリーです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い | 普通 | 高い | 低い | 普通 | 高い |
18〜29歳 | ||||||
30〜49歳 | ||||||
50〜64歳 | ||||||
65〜74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
身体活動量が「普通」で、身長175cmの40代の男性が目標とするBMIを22に設定した場合、目標体重は1.75×1.75×22=67.375kg、推定エネルギー必要量は67.375×39.4=2,655kcal(小数第一位で四捨五入)となります。
高プリン食や糖質、脂質の摂取を抑えるとともに、適切な摂取エネルギー量を超えないよう食事を調整しましょう。
ポイント6 海藻や野菜を摂取する
野菜や海藻を摂取することは痛風の予防・改善に役立ちます。
野菜や海藻は尿をアルカリ性にし、酸性である尿酸を排出しやすくするという特徴があるのです。
さらに、高尿酸血症や痛風で合併しやすい尿路結石症の予防にも効果的といわれています。
野菜や海藻を積極的に取り入れ、尿酸の排出を促しましょう。
3.プリン体の摂取量を抑えるための調理のコツ
痛風を予防・改善するためには食生活を見直すことが重要ですが、調理のコツなどもあれば押さえておきたいところですよね。
そこでここでは、痛風の予防や改善に重要なプリン体の摂取量を抑えるための調理のコツを二つ紹介しましょう。
コツ1 魚は内臓を取り除く
魚を調理する際には、内臓を取り除くことでもプリン体の摂取量を抑えることができます。
高プリン食には魚が多く、なかには魚が好物で食事制限がつらく感じる方もいらっしゃることでしょう。
また、無理な食事制限を行い反動から食べ過ぎてしまうといったこともあるかもしれません。
しかし、魚の内臓を取り除くだけでもプリン体の量を減らすことができます。
主治医に相談しつつ、無理のない範囲でプリン体の摂取量を抑えていきましょう。
コツ2 プリン体を含むゆで汁は捨てる
肉や魚のゆで汁を捨てることでもプリン体の摂取量を抑えることができます。
プリン体は水溶性で、調理時には水中に溶け出します。
また、高プリン食であるかつお節や煮干し、干ししいたけなどを使用しただし汁や調味料のだし、鶏ガラや豚骨を使用したラーメンのスープ、肉を焼いた際に出る肉汁にもプリン体が含まれます。
そのため、調理時のゆで汁を捨てたり、スープや肉汁は飲まないようにしたりすることでもプリン体の摂取量を減らす効果が期待できるでしょう。
4.運動や治療と並行して痛風を予防・改善しよう
高尿酸血症や痛風と診断された場合には、食事内容を見直す以外にも運動療法や医療機関での治療が必要です。
高尿酸血症を放置すれば、痛風を引き起こして関節に激痛を生じたり尿路結石症を合併したりする恐れがあります。
それだけでなく、脳や心臓の病気を引き起こす「動脈硬化」発症のリスクもあるのです。
また高尿酸血症や痛風では、尿酸値や腎臓の機能をチェックするための定期的な検査や内服治療も必要です。
そのため無症状であっても放置せず、医療機関で治療を受けましょう。
持病や痛風の有無、尿酸値によって治療内容は異なりますが、基本的には生活習慣の是正を中心とした食事療法や運動療法が行われます。
高尿酸血症の運動療法では、有酸素運動が推奨されています。
しかし運動の強度や頻度などは個々の状態によって異なるため、自己判断で行わず主治医の指示に基づいて行いましょう。
5.まとめ
痛風はさまざまな原因によって発症しますが、食習慣との関連が深い病気です。
予防や改善のためには摂取エネルギーを適正に保ったり、尿酸値を高める原因となるプリン体の摂取量を抑えたりすることが重要です。
しかし厳しい食事制限はストレスを引き起こしたり、反動から食べ過ぎてしまったりすることも考えられます。
そのため、魚を調理する際は内臓を取り除いたり、だし汁やゆで汁を捨てたりするなどプリン体の摂取量を少しでも減らす工夫を取り入れ、無理のない範囲で継続していきましょう。
またそれだけでなく、痛風の予防や改善には医療機関を受診し定期的な検査や治療を受ける必要があります。
運動療法も必要とされていますが、運動の強度や頻度は個々の状態によって異なるため、主治医の指示に従って適切に行いましょう。