「内臓脂肪ってそもそもどういうものなんだろう?」
内臓脂肪は体脂肪の一種で、体脂肪は内臓脂肪と皮下脂肪に分けられます。
内臓脂肪は胃や腸などの内臓の周り、腹筋の内側につく脂肪です。
蓄積するとさまざまな生活習慣病のリスクを高めることで知られています。
内臓脂肪が多くついたタイプの肥満は「内臓脂肪型肥満」と呼ばれ、おなかがぽっこりとしてしまうため「リンゴ型肥満」とも呼ばれています。
内臓脂肪は男性の体につきやすい傾向があるといわれていますが、女性でも閉経後にはつきやすくなるため注意が必要です。
健康に害がある内臓脂肪ですが、空腹時や運動時にエネルギー源として消費されやすく、比較的落としやすいという特徴もあります。
おなかがぽっこりしてきた、という場合はダイエットに取り組めば早い段階で効果が実感できるかもしれませんね。
一方、皮下脂肪は皮膚と筋肉の間の皮下組織につく脂肪です。
皮下脂肪が蓄積した状態は「皮下脂肪型肥満」と呼ばれます。
腰やお尻、太ももなどの下半身や、二の腕などにつきやすい傾向にあり、皮下脂肪型肥満はその体型から「洋ナシ型肥満」とも呼ばれます。
皮下脂肪は女性の体につきやすく、内臓脂肪と比べ一度蓄積すると落としにくいという特徴があります。
皮下脂肪型肥満では内臓脂肪型肥満ほどの健康への悪影響はないといわれています。
なお、内臓脂肪とおなか周辺についた皮下脂肪は、おなかに力を入れたとき、おへそ周りの脂肪をつかめるかつかめないかで簡単に見分けることができます。
内臓脂肪がつかめない一方で、皮下脂肪はつかめます。
これは内臓脂肪の外側には腹筋がある一方、皮下脂肪は腹筋の外側についているためです。
このように、一口に肥満といっても内臓脂肪と皮下脂肪のどちらが蓄積しているかによってさまざまな違いがあるのですね。
1.内臓脂肪とは?皮下脂肪との違いも解説
「内臓脂肪ってそもそもどういうものなんだろう?」
内臓脂肪は胃や腸などの内臓の周りにつく脂肪です。
蓄積するとウエスト周りが大きくなり、おなかがぽっこりとしてしまいます。
内臓脂肪は蓄積すると健康に悪影響を及ぼすことで知られています。
その半面、比較的落としやすいという特徴もあります。
これは内臓脂肪が空腹時や運動時に素早くエネルギー源として消費されるためです。
なお、内臓脂肪は男性の体につきやすい傾向にあるといわれています。
ただし女性でも閉経後には内臓脂肪がつきやすくなるため注意が必要です。
体脂肪には内臓脂肪の他に、皮下脂肪があります。
内臓脂肪が内臓の周りにつくのに対し、皮下脂肪は下腹部や腰周り、お尻などの皮下組織につきます。
皮下脂肪は女性の体につきやすく、一度蓄積すると落としにくいという特徴があります。
内臓脂肪が蓄積した状態を内臓脂肪型肥満、皮下脂肪が蓄積した状態を皮下脂肪型肥満といいます。
肥満はこの2タイプに分けられます。
【関連情報】 「メタボリックシンドロームとは?診断基準や健康への悪影響を解説」についての記事はこちら
「メタボと判定される腹囲とは?正しい測り方やその他の診断基準も解説」についての記事はこちら
2.内臓脂肪の健康への影響とメタボとの関係
「内臓脂肪は健康にどんな影響があるのかな?」
内臓脂肪が健康に良くないことは何となく分かっていても、具体的にどんな影響があるか知らないという方がほとんどかもしれませんね。
この章では内臓脂肪の健康への影響と内臓脂肪とメタボリックシンドロームの関係について解説します。
2-1.内臓脂肪の健康への影響
内臓脂肪は皮下脂肪に比べ健康に与える影響が大きい脂肪です。
内臓脂肪による健康への悪影響には脂肪組織から分泌される「アディポカイン」という物質が関係しています。
内臓脂肪が増加すると、アディポカインの分泌に異常を来します。
この異常に分泌されたアディポカインが高血圧や糖尿病、脂質異常症の原因になると考えられているのです。
高血圧とは慢性的に血圧が高い状態のことです。
血圧は心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す力のことで、通常は上腕の動脈にかかる圧力のことを指します。
糖尿病は血糖値(血中のブドウ糖濃度)が慢性的に高い状態のことです。
糖尿病には1型と2型があり、生活習慣の影響を受けて発症するのは2型です。
2型糖尿病では生活習慣や遺伝などの要因により、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の効きが悪くなったり、分泌量が低下したりします。
脂質異常症は血中の脂質の値が基準値から外れた状態のことです。
脂質異常症には、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセリドまたはトリグリセライド)などの異常があります。
高血圧や糖尿病、脂質異常症はいずれも「動脈硬化」の危険因子です。
内臓脂肪型肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症を引き起こしやすくし動脈硬化のリスクを高めるため、健康に悪影響を及ぼすといわれているのですね。
2-2.内臓脂肪とメタボとの関係
「おなか周りに脂肪がついた状態をメタボリックシンドロームというのかな?」
内臓脂肪型肥満とメタボリックシンドロームには深い関係がありますが、同じ状態を指すわけではありません。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加え、血圧、血糖、血中脂質のうち二つ以上が基準値から外れた状態のことです[1]。
メタボリックシンドロームについての考え方は国によって異なりますが、日本では内臓脂肪を基盤とした考え方を採用しています。
この考え方が採用されているのは、内臓脂肪の蓄積が高血圧や高血糖、脂質異常症を引き起こし、これらの要素が重なるほどに動脈硬化のリスクが高まるためです。
内臓脂肪の蓄積や高血圧、糖尿病、高血糖、脂質異常症は単独でも動脈硬化のリスクを高めますが、重なるほど動脈硬化を進行させるといわれています。
メタボリックシンドロームの診断においては、内臓脂肪面積が100㎠以上で内臓脂肪蓄積と判断されます[1]。
内臓脂肪の測定ではCTスキャンを行うことが望ましいとされていますが、簡易的にウエスト周囲径で判断される場合もあります。
男性ではウエスト周囲径85cm以上、女性では90cm以上が内臓脂肪蓄積に当たります[1]。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
3.内臓脂肪蓄積の原因
「内臓脂肪がたまる原因って何だろう?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
脂肪が過剰に蓄積した状態である肥満は摂取カロリー(エネルギー摂取量)が消費カロリー(エネルギー消費量)を上回ることによって起こります。
この章では摂取カロリーが消費カロリーを上回り、内臓脂肪の蓄積につながる原因を四つご紹介します。
原因1 食べ過ぎ
食べ過ぎは内臓脂肪蓄積の原因の一つです。
脂肪の蓄積は摂取カロリーの過多によって起こるため、単に食事量が多いだけでなく、カロリー(エネルギー量)の高いものを食べてしまっていると考えられます。
カロリーのある栄養素(エネルギー産生栄養素)には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の三つがあります。
「エネルギー産生栄養素」とはヒトの体になくてはならない栄養素のうち、エネルギー源になるもののことです。
炭水化物は1g当たり4kcal、脂質は1g当たり9kcal、たんぱく質は1g当たり4kcalのエネルギーを生み出します[2]。
特に糖質や脂質の摂り過ぎは中性脂肪蓄積の原因となるため、内臓脂肪が蓄積しているのであれば、これらを摂り過ぎていると考えられます。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
【関連情報】 「中性脂肪を下げるには?7つの方法とポイントを紹介!」についての記事はこちら
「中性脂肪値を下げるには?改善のための食事や運動のポイントを紹介」についての記事はこちら
原因2 運動不足
運動不足の状態では消費カロリーが低下するため内臓脂肪の蓄積を引き起こします。
体を動かすこと、つまり安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する全ての動作のことを「身体活動」といいます。
身体活動量は総消費カロリーの約30%を占めており [3]、運動不足ではこの分の消費カロリーが減ってしまうと考えられます。
また運動不足により筋肉量が低下している場合、「基礎代謝」の減少も起こります。
基礎代謝とは体温の維持や心拍、呼吸などに消費される、生命を保つために最低限必要なエネルギーのことです。
基礎代謝量は総消費カロリーの約60%を占めています[3]。
基礎代謝量は筋肉量の影響を受けて増減し、筋肉量が減ってしまうとそれに伴って基礎代謝も減少するのです。
運動不足では摂取したエネルギーを消費することが難しいため、肥満につながってしまうのですね。
[3] 厚生労働省 健康づくりサポートネット「身体活動とエネルギー代謝」
原因3 アルコールの飲み過ぎ
アルコール飲料の飲み過ぎも内臓脂肪蓄積の原因となります。
アルコールは糖を酵母で発酵することで生じる物質です。
アルコールは1g当たり7kcalと高カロリーです[4]。
さらにアルコール飲料には炭水化物やたんぱく質が含まれることがあるため、飲み過ぎは肥満の原因となってしまいます。
また、アルコール飲料自体のカロリーだけでなく、アルコールによって食欲が増進することや脂っこいつまみを一緒に摂取することも肥満を引き起こします。
厚生労働省の「健康日本21(第三次)」は、1日に摂取する純アルコール量が男性では40g以上、女性では20g以上で生活習慣病のリスクが高まるとしています[5]。
例えば一般的な度数のビールレギュラー缶(350mL)1本には14g程度のアルコールが含まれています[4]。
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
[5] 厚生労働省「健康日本21(第三次)」
[6] 厚生労働省 健康づくりサポートネット「飲酒量の単位」
原因4 基礎代謝の低下
加齢に伴う基礎代謝の低下も内臓脂肪蓄積の原因だといえます。
基礎代謝は筋肉量の影響を受けます。
筋肉量は加齢に伴って低下するため、それによって基礎代謝が低下し、消費カロリーが減ってしまうのです。
若い頃と同じ食生活を送っていても体脂肪が増えてしまうのは、基礎代謝の低下によるものなのですね。
4.内臓脂肪型肥満を予防・改善するポイント
「内臓脂肪型肥満の予防や改善には何をすれば良いんだろう?」
と考えてこの記事をお読みの方もいらっしゃることでしょう。
この章では内臓脂肪を減らし、内臓脂肪型肥満を予防・改善するポイントを七つご紹介します。
食事と運動の両方について触れているので、併せて取り組んでくださいね。
ポイント1 摂取カロリーを適切に抑える
肥満の改善には摂取カロリーの制限が重要です。
BMIを参照して無理のない目標体重を設定し、目標体重を目指し維持することのできる摂取カロリーの目安を算出しましょう。
まずはご自身の現在のBMIを把握してみましょう。
厚生労働省は18歳以上の成人に対し、以下のような目標とするBMIの範囲を定めています。
年齢 | 目標とするBMI |
---|---|
18〜49歳 | |
50〜64歳 | |
65歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
目標とするBMIから目標体重を求めるには、[身長(m)の2乗]×[目標とするBMI]の式を用います。
例えば身長170cmの方がBMI22.0であるときの体重は、63.58kgです。
目標体重における推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)は、このようにして算出した目標体重と体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせて求められます。
推定必要カロリーは身体活動レベルによっても異なります。
以下の表でご自身の身体活動レベルを確認しましょう。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い | 生活のほとんどを座って過ごし、体を動かす機会がほとんどない場合 |
普通 | 座って過ごすことが多いが、職場で歩いたり立ったりする、通勤や買い物などで歩く、軽いスポーツを行うといった機会がある場合 |
高い | 歩いたり立ったりすることが多い仕事に就いている場合、あるいは余暇にスポーツなどを行う活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
ただし、身体活動レベルが「低い」に該当する場合は身体活動量を増やすことが勧められる点に注意が必要です。
身体活動レベルが分かったら、下の表で該当する体重1kg当たりの推定必要カロリーと目標体重を掛け合わせましょう。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い | 普通 | 高い | 低い | 普通 | 高い |
18〜29歳 | ||||||
30〜49歳 | ||||||
50〜64歳 | ||||||
65〜74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
例えば先ほどのように目標体重が63.58kgで、身体活動レベルが「普通」に当たる30代男性の場合、目標体重における推定必要カロリーは63.58×39.4で2,505kcal(小数第一位で四捨五入)です。
このようにして求めた推定必要カロリーを摂取カロリーの目安とし、制限を行いましょう。
[6] 厚生労働省 健康づくりサポートネット「肥満と健康」
ポイント2 脂質や糖質の摂取量を適切に抑える
カロリー源(エネルギー源)になる栄養素には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3種類があります。
なかでも脂質や糖質の摂り過ぎは脂肪の蓄積につながるため、これらを摂り過ぎないようにしましょう。
厚生労働省はエネルギー産生栄養素の目標量を、総摂取カロリーに対し各栄養素から摂取すべきカロリーの占める割合で定めています。
これをエネルギー産生栄養素バランスといいます(単位:%エネルギー)。
年齢 | 炭水化物 | 脂質 | たんぱく質 |
---|---|---|---|
18~49歳 | |||
50~64歳 | |||
65歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
炭水化物(糖質)はご飯やパン、麺類といった主食類の他、いも類、果物類、砂糖やお菓子などに多く含まれます。
脂質は油やマーガリン、マヨネーズ、バター、肉の脂身などに多く含まれています。
炭水化物(糖質)や脂質の多い食生活を送っている方は注意しましょう。
たんぱく質についてはそれぞれ以下の記事でご紹介しています。
タンパク質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
また脂質の構成要素「脂肪酸」の一種である「飽和脂肪酸」は別途摂取を制限することが勧められています。
飽和脂肪酸は体内で合成できるため食事から摂取する必要がなく、高LDLコレステロール血症や肥満の原因としても知られています。
成人の飽和脂肪酸目標量は7%エネルギー以下です[7]。
飽和脂肪酸は肉の脂身や鶏肉の皮、乳脂肪などに多く含まれているので、肉は赤身肉を選ぶ、鶏皮は避ける、牛乳は低脂肪乳に変えるといった工夫をすると良いでしょう。
炭水化物(糖質)を含む食べ物、脂質を含む食べ物についてはそれぞれ以下の記事でご紹介しています。
炭水化物を多く含んでいる食べ物は?摂取基準や健康的な食べ方も紹介
脂質の少ない食べ物とは?脂質の摂取や吸収を抑えるための工夫!
[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
ポイント3 食物繊維を十分に摂る
内臓脂肪蓄積の改善には、食物繊維の摂取も有効であると考えられます。
食物繊維には整腸作用の他、脂質や糖を吸着して体外に排出するはたらきもあります。
このため食物繊維の摂取は肥満の予防や改善に効果があるとされています。
このように有用な食物繊維を、日本人の多くは十分に摂取できていないといわれています。
成人の理想的な食物繊維摂取量は1日当たり25g以上であると考えられています[8]。
しかし日本人の摂取量はこれよりもかなり少なく、目標として掲げても実現可能性が低いため、厚生労働省は以下のような目標量を設定しています。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29歳 | ||
30~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
食物繊維は植物性食品に多く含まれるため、野菜や豆類、きのこ類、海藻類、果実類などを積極的に摂ることが勧められます。
食物繊維を含む食品は以下の記事でご紹介しています。
食物繊維を含む食べ物は?摂取目標量と摂取量を増やすコツも解説
[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
ポイント4 よく噛んで食べる
肥満の改善にはよく噛んで食べることも有効だと考えられます。
噛むことで脳の満腹中枢が刺激されて満腹感を得やすくなり、食べ過ぎの防止につながるのです。
またよく噛むことで食事誘発性熱産生(DIT)が増大するともいわれています。
厚生労働省は一口当たり30回噛む「噛ミング30(カミングサンマル)」運動を提唱しています[9]。
[9] 厚生労働省健康づくりサポートネット「速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」」
ポイント5 アルコールを適度に控える
アルコールは1g当たり7kcalと炭水化物やたんぱく質よりもカロリーが高い物質であるため、肥満の改善には節酒も重要です[10]。
厚生労働省の「健康日本21(第三次)」では、純アルコール量で1日平均約20gが節度ある適度な飲酒だとされています[11]。
純アルコール20gに相当する主なお酒の量は以下のとおりです。
公益社団法人 アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒の基礎知識」をもとに執筆者作成
また、女性や体質的にアルコールの代謝能力が低い人、高齢者ではより少量に抑えることが適切だといわれています。
[10] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
[11] 厚生労働省「健康日本21(三次)」
ポイント6 有酸素運動を行う
体脂肪減少のためには身体活動量を増やし、消費カロリーを増大させることも意識しましょう。
なかでも内臓脂肪を含む体脂肪の減少には有酸素運動が有効です。
有酸素運動とは筋肉にかかる負荷が小さく長時間続けることのできる運動のことで、ウォーキングやジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、水泳などが該当します。
有酸素運動では、体内で酸素と共に糖や脂肪がエネルギー源として消費されます。
このため体脂肪の減少に効果的なのです。
なお、厚生労働省は成人に対し、生活活動を含む3メッツ以上の強度の身体活動を1日60分以上、歩数にして1日約8,000歩の身体活動を推奨しています[12]。
また運動については3メッツ以上の強度で週60分以上または週4メッツ・時以上の実施を勧めています[12]。
メッツは身体活動の強度を表す単位で、座って安静にしている状態を1メッツとした場合に何倍のエネルギーを消費するかを表します[12]。
メッツ・時は運動のメッツと実施時間を掛け合わせたものです。
主な有酸素運動のメッツは以下のとおりです。
運動内容 | 条件 | メッツ |
---|---|---|
歩行 | 平らで硬い地面 |
|
歩行 | 平らで硬い地面 |
|
ランニング | ||
自転車に乗る | ゆっくり |
|
水泳 | ゆっくり |
国立研究開発法人 産業技術総合研究所「改訂第2版『身体活動のメッツ(METs)表』成人版」をもとに執筆者作成
週に4メッツ・時の運動を行う場合、時速4.0kmの歩行であれば1時間20分で満たすことができますね。
「そんなに時間を取れないよ」
と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、短時間に分けて行っても効果は変わらないといわれています。
できることから始めましょう。
有酸素運動についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
有酸素運動とは?効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介
[12] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(概要)」
ポイント7 筋トレを行う
内臓脂肪を減らすためには筋トレを行うことも大切です。
基礎代謝は筋肉量の影響を受けます。
筋肉量が増えると基礎代謝が上がり消費カロリーが増えますが、筋肉量が減ると代謝が落ちて消費カロリーが減ってしまいます。
厚生労働省は週2〜3日の筋力トレーニングを推奨しています [13]。
これは筋トレを行った後、筋肉の成長には休息が必要であるためです。
加齢に伴って減少した基礎代謝を増大させるため、筋トレを行うことも内臓脂肪の減少には有効だと考えられます。
筋トレについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
筋トレの効果とは?トレーニングの頻度・回数・タイミングも解説
[13] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
5.内臓脂肪についてのまとめ
体脂肪は内臓脂肪と皮下脂肪に分けられ、内臓脂肪は胃や腸の周りにつく脂肪です。
内臓脂肪は高血圧や脂質異常症、糖尿病などを引き起こしやすく、動脈硬化を進行させるリスクが高いといわれます。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満に加え、血圧、血糖、血中脂質のうち二つ以上が基準値から外れた状態のことで、内臓脂肪型肥満単独よりもさらに動脈硬化進行のリスクが高いといわれます[14]。
動脈硬化による重大な病気の発症を防ぐため、内臓脂肪型肥満を予防・改善することが重要です。
内臓脂肪型肥満を予防・改善するには摂取カロリーや脂質、糖質、アルコールの摂取量を適切に抑えましょう。
また、食物繊維をしっかりと摂り、よく噛んで食べることも内臓脂肪の蓄積の予防・改善につながります。
運動面では有酸素運動と筋トレを行うことで内臓脂肪を効率的に減少させることができます。
食生活を改善し、運動する習慣を付けて内臓脂肪の蓄積から来る病気を防ぎましょう。
[14] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」