「血圧がどのぐらい高いと高血圧なの?」
「高血圧になるとどんな症状が出るのかな……」
高血圧という言葉を知っていても、どんな状態を指すのかはいまいち分からないという方もいらっしゃるでしょう。
この記事では血圧の仕組みをはじめ、高血圧の基準値や種類、原因や症状を詳しく解説します。
高血圧を予防・改善するためのポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.高血圧とは
高血圧とは、血圧が慢性的に高い状態のことをいいます。
一度測った血圧が高いだけでは高血圧に当たらず、繰り返し測定して基準値より高い値が出ることを指すのです。
そもそも血圧とは心臓から送り出された血液が「動脈」の内壁を押す力のことで、一般的には上腕にある動脈にかかる圧力のことを指します。
心臓はポンプのように収縮と弛緩を繰り返し、酸素や栄養素を含んだ血液を動脈を通じて全身の組織に送り届けています。
心臓が収縮したとき血圧は上昇し、最高に達したときの値を「最高血圧(収縮期血圧)」といいます。
一方、心臓が弛緩したとき血圧は低下し、最低に達したときの値を「最低血圧(収縮期血圧)」といいます。
また一般的に「上の血圧」「下の血圧」という呼称が用いられる場合もあります。
血圧は心臓が血液を押し出す力や心臓から排出される血液量、血管の拡張度合い、血管の弾力性などによって変動します。
つまり心臓から送り出される血液量が多かったり、送り出された血液が通る動脈が細く硬かったりするほど血圧は高くなるのです。
また血圧は時間帯や季節、気温や食事、運動、精神的ストレスなど、多様な因子によっても容易に変動します。
このため一度測定した血圧が高いだけでは高血圧とはいえません。
血圧を繰り返し測定しても正常値よりも高い値が示される場合に高血圧と診断されます。
次の章では血圧の基準値について解説します。
2.血圧の基準値
血圧の基準値は、病院で測定した場合と自宅で測定した場合で異なります。
診察室で測定する際には緊張で血圧が高くなることがあり、一方で自宅での測定値は診察室よりも低めになることがあるため、血圧の基準は家庭での血圧の基準値の方が低く設定されています。
病院で測定した血圧(診察室血圧)の分類は以下のとおりです。
最高血圧 | 最低血圧 | ||
---|---|---|---|
正常血圧 | |||
正常高値血圧 | |||
高値血圧 | |||
Ⅰ度高血圧 | |||
Ⅱ度高血圧 | |||
Ⅲ度高血圧 | |||
(孤立性)収縮期血圧 |
厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「高血圧」をもとに執筆者作成
また自宅で測定した血圧(家庭血圧)の分類は以下のとおりです。
最高血圧 | 最低血圧 | ||
---|---|---|---|
正常血圧 | |||
正常高値血圧 | |||
高値血圧 | |||
Ⅰ度高血圧 | |||
Ⅱ度高血圧 | |||
Ⅲ度高血圧 | |||
(孤立性)収縮期血圧 |
厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「高血圧」をもとに執筆者作成
正常高値血圧と高値血圧は高血圧の一歩手前の段階です。
通常は服薬などの必要はありませんが、「メタボリックシンドローム」のリスクがある場合などには治療の対象となることもあります。
また(孤立性)収縮期血圧とは、最高血圧だけが高い状態で高齢者によくみられるものです。
診察室血圧と家庭血圧で誤差が生じた場合は、家庭血圧による数値が優先的に参照されます。
ただし、この誤差に由来するタイプの高血圧があるため注意が必要です。
家庭血圧は正常なのに、診察室血圧では高血圧と診断されてしまうものを「白衣高血圧」といいます。
白衣高血圧はすぐに治療する必要はない場合が多いといわれていますが、高血圧が続く状態へ移行することがあります。
このため普段から家庭で血圧を測り把握しておくことが重要です。
反対に、診察室血圧は正常なのに家庭血圧は高いという場合を「仮面高血圧」といいます。
仮面高血圧は発見が遅れやすく、治療が行き届きにくいために病気になるリスクが高いといわれているため注意が必要です。
3.高血圧の症状と健康に及ぼす悪影響
「高血圧にはどんな症状があるんだろう?」
「高血圧だと健康に何が悪いのかな」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
この章では、高血圧の症状や健康への悪影響について詳しく解説します。
3-1.高血圧の症状
通常、血圧が多少高いくらいでは自覚症状がありません。
ただし血圧が並外れて高い場合には、頭痛や目まい、肩こりなどが起こりやすくなるといわれています。
しかしこうした症状は高血圧でなくてもよく見られるため、症状から高血圧に気づくことは難しいといえます。
高血圧は自覚症状がないために気付かないうちに進行し、重大な病気を引き起こす危険性があることから「サイレントキラー」といわれることがあります。
症状の有無にかかわらず、定期的に血圧を測定し必要に応じた治療を受ける必要があるのです。
3-2.高血圧が健康に及ぼす悪影響
高血圧が長く続くと「動脈硬化」を進行させ、重大な病気を引き起こすリスクがあります。
高血圧が続くと血管が常に張り詰めた状態に置かれるため、次第に動脈硬化が進行するのです。
高血圧による動脈硬化は太い血管にも細い血管にも起こり、生じた部位によって脳出血や脳梗塞、心筋梗塞、大動脈瘤、腎硬化症などさまざまな病気を引き起こす恐れがあります。
脳出血とは、脳の中の細い動脈が破れ、出血する病気です。
運動まひや感覚障害が現れ、ひどい場合には命に関わります。
また脳梗塞は脳の血管が詰まることで脳細胞が壊死(えし)する病気で、手足のまひや意識障害などを生じ、多くの場合には後遺症を残します。
心筋梗塞は心臓の血管が詰まり、心臓(心筋)が壊死を起こす病気で、速やかに対処しなければ死に至ります。
大動脈瘤は人体で最も太い「大動脈」という血管に、こぶ状の膨らみが生じる病気です。
気付かぬまま放置しているとこぶが破裂してしまい、激しい出血を引き起こして命を脅かします。
腎硬化症は腎臓の血管が狭まり、老廃物をろ過して尿をつくる腎臓のはたらきが低下してしまう病気です。
このように高血圧による動脈硬化は全身に重大な病気を引き起こすリスクを高めてしまうのですね。
動脈硬化や、引き起こされる病気に関しては以下で詳しく解説しています。
動脈硬化とは?原因や病気のリスク、進行を防ぐポイントを徹底解説
このような重篤な病気を予防する上でも、高血圧は早期発見・治療が重要です。
4.高血圧の種類
高血圧は、遺伝や生活習慣によって起こる「本態性高血圧」と、そのほかの病気によって起こる「二次性高血圧」の2種類に分けられます。
この章では、これらの高血圧の種類について詳しく解説します。
4-1.本態性高血圧
本態性高血圧は直接的な原因が分からないが、生活習慣や遺伝的な要因が組み合わさって生じたと考えられる高血圧のことです。
国内での高血圧の大半を占めるのが、このタイプです。
本態性高血圧の発症には、食塩の過剰摂取や飲酒、運動不足、喫煙、ストレスなどが関わるといわれています。
また内臓に脂肪が多く付く「内臓脂肪型肥満」では、高血圧になりやすいと分かっています。
本態性高血圧を改善するには、生活習慣の改善が重要です。
4-2.二次性高血圧
二次性高血圧とは血圧上昇を引き起こす持病によって高血圧が生じている状態のことです。
原因として甲状腺や副腎などの病気や、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。
二次性高血圧の改善には、原因となる病気の治療を行うことが不可欠です。
血圧が高めの場合、まずは医療機関で原因を明らかにし適切な治療を受けるようにしましょう。
5.高血圧の主な原因
高血圧はさまざまな原因で生じます。
この章では、本態性高血圧の原因である生活習慣などについて詳しく解説します。
原因1 塩分の過剰摂取
日本人の本態性高血圧の最大の原因といわれているのは食塩の摂り過ぎです。
これは、食塩の主成分の一つである「ナトリウム」が原因です。
ナトリウムを過剰に摂ると結果として血液量が増えるため、血圧上昇を招くといわれています。
ヒトの体ではナトリウムや水分などの濃度が一定に保たれるよう調整されており、血中のナトリウム濃度が高まると、濃度を下げるために水分がため込まれます。
これにより体内を巡る血液量が増え、血管の壁にかかる力が大きくなることで血圧が上昇してしまうのです。
日本人の食生活では塩分の摂り過ぎが起こりやすいといわれているので注意が必要です。
原因2 肥満
肥満も高血圧の原因とされています。
実際に肥満の方は体重が正常な方に比べて、高血圧になりやすいと分かっています。
これは、肥満の方には食べ過ぎやそれに伴う食塩の摂り過ぎが起こりやすいためと考えられています。
また肥満の状態では、血糖値を低下させる「インスリン」の効きが悪くなることから分泌量が増加します。
インスリンには腎臓の尿細管でのナトリウムの再吸収を促すはたらきがあるため、分泌量が増えることで血中のナトリウム濃度が上昇してしまいます。
これにより血液量が増加し、血圧が高くなるのです。
加えてインスリンの影響で「交感神経」が刺激され、末梢血管を収縮させるはたらきのある「カテコールアミン」が分泌されることも原因だと考えられます。
さらに、肥大した脂肪細胞から分泌される「アンジオテンシノーゲン」という生理活性物質にも血管を収縮させる作用があります。
これらの影響によっても、血圧上昇を招く恐れがあるのですね。
原因3 過度な飲酒
お酒の飲み過ぎも高血圧の原因になります。
アルコールには血管を広げる作用があるため、少量であれば血圧を一時的に低下させるといわれています。
しかし、過度な飲酒や長期間にわたる飲酒は血圧を上昇させる恐れがあります。
またアルコール自体が1g当たり約7kcalと高カロリーであることや[1]、食欲増進作用を有することから、高血圧の原因である肥満を招く可能性があります。
お酒のつまみとされるものには、塩分が多く含まれているものが多いことも高血圧の危険因子といえます。
[1] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「アルコールのエネルギー(カロリー)」
原因4 運動不足
運動不足も高血圧の要因になります。
運動不足の状態では、血流が悪化しやすくなります。
全身の筋肉はポンプのようにはたらき、血の巡りをサポートしています。
しかし運動不足によって筋力が衰えると、血液を押し出す力が低下します。
このため、心臓はより強い力で血液を送り出そうとはたらき、血管の壁にかかる圧が高くなると考えられています。
また運動不足によって、摂取したカロリー(エネルギー摂取量)が消費しきれないと肥満の要因にもなります。
原因5 喫煙
喫煙も高血圧の要因になります。
たばこにさまざまな有害物質が含まれていることは、よく知られていますね。
たばこに含まれる有害物質のうち、ニコチンや一酸化炭素は血圧を上昇させます。
ニコチンは交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧の上昇を招きます。
また一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンと結びついて体内を酸素不足の状態に陥らせます。
一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っています[2]。
このため喫煙で体内に一酸化炭素が入ると、ヘモグロビンは酸素と結びつけず体が酸素不足の状態になるのです。
これにより心拍数の増加や血管の収縮を招き、血圧の上昇を引き起こします。
さらに一酸化炭素は血液の粘度を高めて固まりやすくする性質があるため、動脈硬化の原因にもなるといわれています。
たばこに含まれるさまざまな有害物質は、高血圧を引き起こす原因になるのですね。
[2] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「一酸化炭素」
原因6 ストレス
ストレスも高血圧の原因になります。
ストレスとは外部から何らかの刺激を受けたときに生じる緊張状態のことを指します。
外部からの刺激には天候や騒音といった環境的なもの、睡眠不足といった身体的なもの、不安や悩みといった心理的なもの、人間関係や仕事に関連する社会的なものなどが挙げられます。
こうしたストレスを受けると、交感神経が優位になるため血圧上昇を招くのです。
ストレスがかかると血圧が上昇する状態を「昼間高血圧(ストレス下高血圧)」といいます。
これは、診察室血圧が正常で、家庭血圧が高い仮面高血圧の一種です。
原因7 遺伝的要因
高血圧の発症には遺伝的要因も関与するとされています。
実際、家族に高血圧の方がいる場合は、高血圧になりやすい傾向にあるとされています。
ただし遺伝的な要因のみで高血圧の発症に至るとは限りません。
血縁者、特に同居者は同じ食事を摂ったり生活習慣が似ていたりするため、遺伝的な要因だけでなく環境的な要因も合わさった結果、高血圧が発症すると考えられるのです。
このため血縁者に高血圧の方がいても、生活習慣を改めることで高血圧を予防・改善できると考えられるでしょう。
6.高血圧を予防・改善するポイント
「高血圧を予防するには何に気をつけたら良いのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
この章では、本態性高血圧を予防するための生活習慣などについて詳しく解説します。
ポイント1 減塩を行う
高血圧を予防・改善するには、減塩を心掛けましょう。
塩分の摂り過ぎは日本人の高血圧の最大の原因です。
高血圧の予防・改善のためには1日当たりの食塩摂取量を6g未満にすることが望ましいとされています[3]。
またWHOのガイドラインでは、成人において1日の塩分摂取量を食塩相当量で5g未満にすることを強く推奨しています[3]。
日本人の20歳以上における食塩相当量の平均値は、男性で10.9g、女性で9.3gです[4]。
前述の推奨量を大きく上回っていることから、塩分を摂り過ぎる傾向にあると分かりますね。
欧米の研究により、血圧を下げるには1日当たりの食塩摂取量を6g台前半まで減らさなければならないと分かっているため[3]、厳しい減塩に取り組むことが勧められます。
日頃の食生活では、薄味を意識して塩分を抑えましょう。
しょうゆやソースなどの調味料を食べ物にかけて食べる習慣のある方は、小皿に調味料を出してつける食べ方にするだけで塩分の摂取量を減らせるといわれています。
調味料はむやみに使わず、味見しながら必要な分だけ使うようにしてくださいね。
しかし、減塩をすると食事がおいしくなくなると不安に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
そのような場合は酢やケチャップ、マヨネーズといった塩分の少ない調味料を上手に使うと良いでしょう。
ただしケチャップやマヨネーズはそれぞれ糖質や脂質が多めのため、食べ過ぎに注意してくださいね。
また、こしょうやしょうが、柑橘(かんきつ)類といった香辛料・香味野菜・果汁を利用すると、減塩による物足りなさを緩和できると考えられます。
この他、漬物やみそ汁を多く食べる方は食べる量を減らしましょう。
ラーメンなどの麺類の汁を飲んでしまうとそれだけで6g近い塩分を摂ってしまうため、飲み干さないことが重要です[5]。
さらに、外食や加工食品は多くの塩分を含んでいるのでできるだけ控えるようにしましょう。
ご自宅での調理の際は、新鮮な食材を使うことで薄味にしても食材の味を楽しむことができますよ。
減塩を意識し、できることから始めてみてくださいね。
減塩のポイントについては以下の記事で解説しています。
減塩食を続けるポイントとは?健康への効果や食塩の摂取目標量も紹介
[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[4] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
[5] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「高血圧」
ポイント2 カリウムを十分に摂取する
高血圧の予防・改善にはカリウムを摂取するようにしましょう。
カリウムにはナトリウムの排せつを促す作用があるため、血圧を下げる効果が期待できます。
そのためWHOは成人に対して1日当たり3,510mg以上のカリウム摂取を推奨しています[6]。
しかし20歳以上の日本人のカリウムの平均摂取量は男性で2,439mg、女性で2,273mgであり、この推奨量に達していません[7]。
厚生労働省は実際の摂取量を元に実現可能な数値を考慮し、成人での1日のカリウムの摂取目標量は男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上と設定しています[6]。
カリウムは野菜類や海藻類、いも類、豆類、果物類などに多く含まれています。
食材中のカリウムには、水にさらしたりゆでたりすると水に溶け出してしまう性質があります。
このため加熱する場合は電子レンジを使用すること、スープなどにして汁ごと食べることなどがおすすめです。
カリウムを豊富に含む食べ物は以下の記事で詳しく解説しています。
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[7] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
ポイント3 食物繊維を十分に摂取する
高血圧の予防・改善には食物繊維を摂取するようにしましょう。
食物繊維は消化・吸収されずに大腸にまで達する性質があります。
便の材料になったり、腸内に住む善玉菌を増殖させたりすることでおなかの調子を整えるはたらきをします。
また、ナトリウムや脂質、糖質を吸着して体外に排出する作用もあるため、高血圧や肥満などの予防・改善が見込めるのです。
成人の食物繊維摂取量は1日当たり24g以上が理想的とされています[8]。
しかし20歳以上の日本人における食物繊維摂取量の平均値は、1日当たり男性で19.9g、女性で18.0gです[9]。
この摂取量を踏まえ実現可能な数値を考慮し、1日当たりの食物繊維の摂取目標量は18〜64歳の男性で21g以上、65歳以上で20g以上と設定されています[8]。
一方女性では18〜64歳で18g以上、65歳以上で17g以上です[9]。
食物繊維は主に植物性食品に含まれており、いも類やきのこ類、海藻類、野菜類、豆類などから摂ることができます。
また主食を玄米や麦ご飯、胚芽米ご飯、全粒粉パンなどに置き換えることで食物繊維を効率良く摂ることができますよ。
食物繊維を多く含む食べ物は以下の記事をご覧ください。
食物繊維を含む食べ物は?摂取目標量と摂取量を増やすコツも解説
[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[9] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
ポイント4 摂取カロリーを適切に抑える
高血圧の予防・改善には摂取カロリー(エネルギー摂取量)を適切に抑えることが重要です。
日本では内臓脂肪型肥満に伴う高血圧が増えています。
肥満とは「BMI」が25以上で体脂肪が蓄積した状態です[10]。
肥満は摂取カロリーが消費カロリー(エネルギー消費量)を上回ることによって起こるため、摂取カロリーを制限し減量を目指すことが大切です。
BMIが肥満に該当する方は「標準体重」を目標体重にすると良いでしょう。
標準体重はBMIが22.0の状態で、高血圧を含む肥満と関連の強い病気に最もかかりにくい体重といわれています[10]。
標準体重は[身長(m)の2乗]×22で求めることができます[10]。
目標体重が決まったら以下の表を参照し、体重1kg当たりの推定必要カロリーと掛け合わせましょう。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
18~29歳 | ||||||
30~49歳 | ||||||
50~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルについては以下の表を参照しご自身に合ったものを確認してください。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごしている場合 |
普通(Ⅱ) | 座って過ごすことが多いが、立った状態での作業や徒歩移動、家事、軽いスポーツなどをしている場合 |
高い(Ⅲ) | 歩いたり立ったりしている時間が長い場合、あるいは活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
高血圧や肥満を予防・改善するには、ご自身の体格に合った摂取カロリーに抑えるようにしてくださいね。
[10] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「肥満と健康」
ポイント5 飲酒量を適切に抑える
高血圧を予防・改善するには、飲酒量も適切にしましょう。
多量飲酒や、習慣的な飲酒は高血圧の原因になります。
このため、毎日飲酒する習慣がある方は適切な飲酒量を守り、飲酒しない日を設けることが大切です。
適度な飲酒量は、「純アルコール量」で1日平均約20gです[11]。
主なお酒の純アルコール20g相当の量は以下の図のとおりです。
公益社団法人 アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒の基礎知識」をもとに執筆者作成
ただし適切な飲酒量は体質や性別、年齢によっても異なるため注意が必要です。
少量の飲酒で顔が赤くなるといった方の場合はアルコールの分解能力が低いため、より少ない飲酒量にとどめるようにしましょう。
また女性は男性よりアルコールの分解能力が低く、ダメージを受けやすい体質といわれています。
このため男性より少ない量が適当であるといわれています。
さらに65歳以上の高齢者は若い人に比べてアルコールの分解能力が低いため、飲酒量を減らすように心掛けましょう[11]。
この他、お酒を飲むときは塩分量やカロリーの多いおつまみを食べ過ぎないように注意してくださいね。
[11] 厚生労働省「アルコール」
[12] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「飲酒量の単位」
ポイント6 有酸素運動を適度に行う
高血圧の予防・改善には、適度な「有酸素運動」も効果的です。
有酸素運動では「血管内皮機能」が改善され、血圧を下げる効果が期待できるとされています。
また運動で筋肉にたくさんの酸素や栄養を運ぶために血管が広がり、交感神経の緊張が緩和されることによって血圧が下がります。
ただし、筋トレなどの負荷が高い運動は血圧を急上昇させる恐れがあるため注意が必要です。
このため高血圧を改善するには、「ややきつい」と感じられる程度の有酸素運動を定期的に、できれば毎日行うことが勧められています。
まとまった運動時間が取れない場合には、1回につき10分以上の運動を合計して1日40分以上行いましょう[13]。
また運動習慣がない方の場合は掃除や洗車をしたり、自転車で買い物に行ったりして活動量を増やすことから始めることがおすすめです。
その場合、1週間当たりの総運動時間、あるいは総消費カロリー(総エネルギー消費量)で考えて運動量を調整しましょう。
例えば、1回当たりの運動時間を長くして運動回数を減らしたり、運動強度を下げる代わりに運動回数を増やしたりして調節すると良いでしょう。
運動を行う際にはけがを予防するために準備運動としてストレッチなどを行うようにしてくださいね。
また狭心症などの持病がある場合には、事前に医療機関で主治医に相談の上、運動を行うようにしてください。
[13] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「高血圧症を改善するための運動」
ポイント7 禁煙する
高血圧の予防・改善には禁煙も重要です。
たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は血圧を上昇させます。
喫煙は高血圧だけでなく、がんや脳卒中、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器の病気などの原因です。
このため健康を維持するには、禁煙に取り組むようにしましょう。
禁煙は難しいと感じる方は、たばこをやめたい方向けの「禁煙外来」を訪れても良いでしょう。
一定の基準を満たす方には健康保険が適用されますよ。
健康的な毎日を送るために禁煙に取り組んでくださいね。
ポイント8 ストレスをため込まない
高血圧の予防・改善にはストレスを解消することも大切です。
ストレスを感じると交感神経が刺激され血圧の上昇を招いてしまいます。
血圧を安定させるためには日頃からストレスを発散するようにしましょう。
ストレスの発散方法としてはゆっくりと腹式呼吸をする、ストレッチする、好きな音楽を聴くなどがあります。
自分に合った方法でリラックスする時間を設けてくださいね。
また入浴をすると体を休めるときにはたらく副交感神経が優位になります。
ゆっくり入浴することで、心身をいたわると良いでしょう。
ただし就寝直前や熱い温度での入浴は、入眠を妨げることがあるため注意が必要です。
入浴は就寝の2~3時間前には済ませ、38度のぬるめのお湯で25〜30分程度にすると寝つきが良くなります[14]。
また約40度のお湯で30分ほど汗をかく程度の半身浴でも寝付きの効果が得られるため、自分の体調や好みにあった入浴方法を選択しましょう[14]。
この他、寝る前の飲酒は睡眠の質が低下してしまい、心身には逆効果になるため避けるようにしてくださいね。
その他のストレス解消法が知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ストレス発散に効果的な方法は?手軽にスッキリできるおすすめ解消法
[14] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「快眠と生活習慣」
ポイント9 こまめに血圧をチェックする
高血圧の予防のためには毎日の血圧チェックも重要です。
高血圧には自覚症状がほとんどなく気付けないことが多いので、普段から血圧を測定して自分の血圧を把握しておきましょう。
「家で血圧を測るときに気を付けるポイントってあるのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
血圧は運動やストレスといった影響を受けて、常に変動しています。
このため繰り返し測定し、ご自身の血圧がどの程度かを把握することが重要です。
朝と夜の2回測定した血圧を毎回記録し、平均の血圧が分かるようにしましょう[15]。
また、測定するタイミングや環境を整えることも大切です。
朝は起床後1時間以内に、排尿後、食事や内服前の段階で、夜は眠る前に測定しましょう[15]。
測定前はたばこを吸わないこと、飲酒しないこと、カフェインを摂らないことを心掛け、座って1〜2分間安静にしてから測るようにしてください[15]。
静かで過ごしやすい環境下で測定し、測定時には話をしたり、体に力を入れたり動いたりしないようにしましょう。
測定は座った状態で行い、測定する腕を机に乗せて血圧計の腕に巻く部分(カフ)の高さと心臓の高さが合うような姿勢で行うことがポイントです。
血圧計は手首ではなく、上腕にカフ(巻き付ける部分)を付けるタイプの方がより正確なのでおすすめです。
また可能であれば、仕事中などストレスを強く感じている際にも血圧を測ると良いでしょう。
家庭用の血圧計は家電量販店などでも手に入れられるため、ご自分の血圧を把握して高血圧を早期に気付けるようにしてくださいね。
[15] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定特定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子 高血圧の話」
7.高血圧についてのまとめ
高血圧とは、血圧が慢性的に高い状態のことをいいます。
そもそも血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、一般的には上腕にある動脈にかかる圧力のことを指します。
血圧はさまざまな因子によって調節されており、常に変動しているため一度測定した血圧が高いだけでは高血圧とはいえません。
診察室での測定を繰り返し、最高血圧140mmHg以上または最低血圧90mmHg以上である場合に高血圧と診断されます[16]。
また家庭で測った血圧の基準値は最高血圧135mmHg以上、または最低血圧85mmHgです[16]。
高血圧は生活習慣や遺伝的要因が組み合わさって起こる本態性高血圧と、高血圧を引き起こす何らかの病気が原因となっている二次性高血圧に分けられ、多くの場合は前者に該当します。
多少血圧が高い場合では自覚症状がありませんが、血圧が並外れて高い場合には、頭痛や目まい、肩こりなどが起こりやすくなるといわれています。
また高血圧が長く続くと動脈硬化を進行させ、生じた部位によって脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞などさまざまな病気を引き起こす恐れがあります。
本態性高血圧は食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、喫煙、ストレスに加え、遺伝的要因などが原因となって引き起こされます。
このため高血圧の予防・改善には生活習慣を整えることが大切です。
塩分の摂り過ぎは日本人の高血圧の最大の原因のため、1日当たりの食塩摂取量を6g未満にすることが望ましいとされています[17]。
また食事面では、ナトリウムの排せつを促すカリウムや食物繊維を摂取し、摂取カロリーを適切に抑えることが重要です。
その他に節酒や禁煙、有酸素運動を行うことも重要です。
日頃から自分に合った方法でストレスを解消し、血圧をこまめに測定することも心掛けましょう。
この記事を参考に生活習慣を改善し、高血圧の予防・改善に努めてくださいね。
また、血圧が高い場合は自己判断せず、まずは医療機関を受診してください。
[16] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「高血圧」
[17] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
執筆者 メディパレット編集部
私たちは「健やかな未来を、ここから。」をコンセプトに、健康に関わる情報メディア“Medipalette”を運営しています。